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次世代へ受け継がれる“西尾の鋳物”【西尾市鋳物工業協同組合】
私たちの生活の中にあふれている“鋳物”。溶かした金属を型に流し込み、冷やし固める“鋳造”というモノづくりの技法で作られており、生産量は愛知県が日本一、中でも西尾市はトップクラスのシェアを誇っています。その歴史は江戸時代から300年以上続いており、平坂町を起点に今も技術が受け継がれています。
今回は、西尾市の重要な地場産業である“鋳物”をもっと多くの人に知ってもらい、次世代につなげていくための”西尾市鋳物工業組合”の取組を紹介します。
小学生がチャレンジ!鋳造体験授業
12月19、20日に西尾市鋳物工業組合(以下、「鋳物組合」)と株式会社イナテックが運営する鋳造体験工房ritakoboが主催する鋳造体験が平坂小学校5年生を対象に開催されました。この体験は、平坂小学校の発案により昨年度から実現したもので、次世代に伝統技術の魅力を伝えることを目的としています。今年度は、11月28日に行われた組合企業である株式会社尾﨑鋳造所の工場見学と併せて開催され、地場産業の一端を体験する貴重な機会となっています。
まずは、鋳物の歴史や鋳物のつくり方、身の回りにある鋳物製品の紹介からスタート。イモじい、イモノフのユニークな鋳物組合公式キャラクターが登場し、1つ1つの説明にも工夫が見られます。最初は緊張していた児童たちも次第に鋳物に興味を持ち始め、身の回りにある鋳物の紹介では、花柄ポストを例に、「どこにあるかわかる人いますか?」と聞くと、児童は「西尾市役所にある!」と答え、鋳物が身近なものであることを実感している様子でした。
続いて行われたのが、キーホルダー鋳造体験です。砂を使って型を作り、そこに溶かした金属を流し込む”砂型鋳造”は、西尾の鋳物の特徴的な技法のひとつ。木枠にキーホルダーの型を置き、砂を入れて固めていく工程では、数回に分けて砂を入れて押し固める繊細な作業を体験。砂型が完成すると、児童たちは鋳物組合の講師と一緒に溶かした金属を木型に流し込みます。金属が固まる速さには、児童たちから驚きの声が上がりました。そして最後の仕上げ作業。固まった金属製品は”バリ取り(※金属の加工時に発生する不要な突起(バリ)を研磨し除去する作業)”を行います。児童たちはやすりで角度を変えながら、バリを削り落とし、まるで小さな職人のような姿を見せました。「きれいになっていくのが楽しい。」「穴の中を削るのが難しい。」と、皆が夢中になってモノづくりを楽しんでいました。




体験の最後には、鋳物組合からのメッセージ。「鋳物は金属を溶かして形を作り替える、生まれ変わらせることができる、無限の可能性を秘めたものです。ぜひ、想像を膨らませ、興味を持ってください」。
児童たちからも「金属って何種類あるの?」との質問や、「鋳物ってあまり知らなかったけれど、砂を使うなんてびっくりした。溶けた金属も初めて見た。」「鋳物の先生たちが優しく教えてくれて、楽しくできた。またやりたい。」「自分で作ったキーホルダーだから宝物になる。」との言葉があり、鋳物の魅力やモノづくりへの関心がしっかりと伝わっていることが感じられました。
「工場見学」で、今の鋳物づくりを知る
今回、小学校の鋳造体験授業取材後、鋳物の現場をより深く知るために工場見学を依頼。訪れたのは、鋳物組合の鈴木理事長が会長を務める株式会社ヤマキです。見学の冒頭、「歴史のある地場産業の鋳物の技術を継承していくことで、西尾の鋳物を守っていきたい。そのために、次世代に向けた鋳造体験や工場見学等の取組を行っています。工場見学を通じて、昔のイメージとは違う今の工場をぜひ感じてほしい。」と鈴木理事長は語ります。
工場を案内してくださったのは鈴木製造部長。工場見学では、製造プロセスや作業環境、製品の全てに驚きと感動がありました。かつては多くの作業が手作業で行われており、昔の過酷なイメージが先行されがちですが、現在では製造工程が自動化されてきており、作業環境の改善、安全性の向上、効率化が進んでいます。また、工場見学では職人が鋳物づくりに取り組むひたむきな姿勢や眼差しを直接見るこができます。自動化が進んだ今でも、職人の技術は欠かせません。金属の溶解の管理や、型に金属を流し込む細かな調整等には熟練の技術とノウハウが必要です。製品の加工を見て、技術の継承がどれほど大切かを実感しました。
鋳物の未来を、次の世代へ
西尾の鋳物が地域に根付いた伝統技術として、また未来を見据えた産業として成長し続けるために、このような体験は欠かせません。鋳物組合では「今後も鋳造体験の開催に留まらず、異なる鋳造工法の工場見学など活動の幅を広げ、子どもたちを中心に鋳物の魅力を積極的に発信していきたい。」と話されます。
”西尾の鋳物”には、まだまだたくさんの可能性があります。これからも伝統を守りつつ、新しい時代のモノづくりへ!みなさんも、ぜひ“鋳物”の世界をもっと知ってみてください。