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本と人、人と人がつながる場所【オチャノマ文庫】
今年10月11日、西尾市のまちなかに新たな憩いの場「オチャノマ文庫」が開館しました。運営をするのは、館長の荒川千登勢さん。読書を通じて人がつながる場所をつくりたい―そんな思いから生まれた私設図書館です。荒川さんは、今年2月に市内でおこなわれたマルシェ内で個人書店を開業。荒川さんの書店(旅する書店Nook(ヌック))では新刊や自身の蔵書、祖母から譲り受けた本などを販売するほか、一般的な書店ではあまり扱われないZINE(ジン)なども取り扱っています。さらに、“選書サービス”として、一人ひとりに合った本を提案する活動も始めました。
「昨年、西尾市の観光アンバサダーとして活動するなかで、この町とつながり続けたいという想いが強くなりました。そんな時に“本屋になろう!”と思い立ったんです。」と荒川さん。幼い頃は月に100冊もの本を読むほどの読書好き。社会人になってから再び本に支えられた経験もあり、その魅力を多くの人と共有したいという気持ちが原動力になったと言います。そんななか、人との出会い、場所との出会いをきっかけに「【みんとしょ】という私設図書館という方法なら、地域の人に支えていただきながらこのまちなかで居場所を持てるかもしれない。」と感じたことが開館への第一歩でした。決断を後押ししたのは、小説・アルケミスト。“強く望めば、宇宙のすべてが協力してくれる”という一節がまさに自身の状況と重なったそうです。
【みんとしょ】という新しい図書館のかたち
オチャノマ文庫では、静岡県焼津市で生まれた【みんとしょ】という仕組みを採用しています。みんとしょは現在全国で110カ所以上に広がっています。本棚オーナーは月額2,000円(税込)で1棚を借り、自分の好きな本や世界観を表現でき、読書発信の場として活用する人もいれば、お店や活動を紹介する“本棚広告”として使う人も。まさに本棚を通じた小さな自己表現の場です。また、読者として利用する場合は年会費1,000円(税込)で1回につき4冊まで約1カ月間借りることができます(館内閲覧は無料)。「2週間だと読み切れない」という利用者の声を踏まえ、ゆったりと本に向き合える期間が設けられています。
本をきっかけに、人とつながる場へ
「図書館というと“本が主役”のイメージですが、私にとっては“人と人が出会うきっかけ”であってほしい。」と荒川さん。今後は読書会やワークショップなども企画予定で、誰もが安心して自分を表現できる場所を目指しています。「オチャノマ文庫で自分の夢を叶えたように、ここを利用する方々の夢を叶える場所にもなってほしい。人と出会い、話し、本を通じて新しい世界を知る-そんなきっかけが生まれる場所にしたいです」。
感謝とともにスタートを
開館を迎えた今、荒川さんの胸にあるのは感謝の気持ちだと言います。「西尾は出身地ではありませんが、多くの方の支えでこの場所を持つことができました。市の方々や本屋さんで出会ったお客さん、クラウドファンディングで応援してくださった本好きの皆さんのおかげです。西尾のまちなかで長く続けていけるよう頑張りたいです」。
現在オチャノマ文庫では約30人の本棚オーナーが活動中。全100棚のうち、まだ空きもあるとのこと。今後は、選書サービスの受付など、読書のきっかけを広げる新しい試みも予定しています。
本を通じて、人とまちをつなぐ
静かな時間を過ごしたい人、本を通じて誰かと出会いたい人、そして何かを表現したい人。オチャノマ文庫は、そんな一人ひとりに寄り添う「まちなかの居場所」です。