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事業者紹介

地域とともに粉を挽く【西尾製粉株式会社】


 1900年創業、126年の歴史を持つ西尾市の製粉会社「西尾製粉株式会社」。小麦粉を中心に、地域の食文化を支えてきた老舗企業です。2023年6月、その長い歴史のバトンを引き継いだのが、9代目代表取締役社長の丹羽百恵さんです。しかし、その就任は決して計画されたものではありませんでした。



-畑違いの業界からの突然のバトン

 丹羽さんは、西尾に生まれながらも小学校卒業後は名古屋で暮らし、結婚後も名古屋で生活していました。それまでの仕事は保険業界。家業である製粉業に関わることはほとんどなかったといいます。「本当に2〜3年前までは、名前だけ貸している株主のような状態で、会社が何をしているかもよく知らないくらいでした」。転機となったのは、前任社長の体調不良。会社の今後を心配した社員が直接会いに来たことがきっかけでした。「営業もしたことがないし、粉の知識もない。ましてや経営者の経験もない。正直、不安だらけでした」。それでも、当時の製造責任者から「難しい部分は自分が支えます。」と言われ、会社を引き継ぐ決断をします。「とにかく今の事業を継続しよう、そこから考えよう。そんな思いで代表になりました」。



-製粉会社として地域の食を支える

 西尾製粉の事業の中心は、企業向けのBtoB取引です。小麦を製粉し、パン屋やお菓子メーカー・ラーメン店などへ供給。売上の約7割を小麦粉が占めています。地元愛知の小麦も多く扱っており、西尾周辺は小麦栽培が盛んな地域でもあります。実は愛知県の小麦は、収穫効率(反収)が全国トップクラス。農業技術の進化や若い農家の活躍によって、地域の農業も大きく変化しています。
 また、小麦粉以外では大豆粉も主力商品のひとつ。丸大豆を粉にすることで、小麦粉の代替食材として菓子などに活用できる商品として提案しています。

-日本唯一の「スペルト小麦」ロール挽き

 西尾製粉ならではの特徴の一つが、スペルト小麦(古代小麦)の製粉です。健康志向やヴィーガンの方から注目される食材ですが、日本では取り扱う会社がほとんどありません。特に西尾製粉では、通常石臼で少量ずつ挽かれることの多いスペルト小麦を、ロール製粉で大量生産できる日本唯一の製粉会社とされています。石臼製粉が1時間に約5kg程度なのに対し、同社では一度に10トン単位で製粉が可能。この技術が大きな強みとなっています。




-新たに始めたEC事業

 BtoBが中心だった同社ですが、丹羽さんが社長に就任したあと、新たに一般消費者向けのECサイトを立ち上げました。現在では北海道から沖縄まで全国から注文が届くようになり、海外からの問い合わせも増えているそうです。特に近年は、ハラール対応商品を求めるイスラム圏の顧客からの注文も増えています。「電話対応では英語が難しいので、商品を全部ホームページに掲載して英語表記もつけました。そうしたら定期的に注文してくださる方も出てきました」。小さな取り組みから、新しい市場が広がりつつあります。

-社員みんなで作る「こなやのマルシェ」

 社長就任後、丹羽さんが最初に取り組んだ新しい試みの一つが“こなやのマルシェ”です。社長就任当初、丹羽さんが考えたのは「社員みんなが同じ目標に向かって、楽しく取り組めることを作りたい」ということでした。そこで生まれたのが、製粉会社ならではのマルシェイベント。丹羽さん自ら各地のマルシェに足を運び、美味しいお店を見つけては出店をお願いするなど、準備を進めてきました。
 初開催では、当初50人ほどの来場を想定していたものの、実際には700〜800人が来場。その光景を見て、社員からも「マルシェっていいですね。」という声が上がったといいます。食品工場は一般の人が入る機会が少ない場所。だからこそ地域の人に会社を知ってもらい、食を支える企業としての役割を身近に感じてもらえる機会にしたいと考えています。
 こうした取り組みの一環として、2026年4月11日には第2回“こなやのマルシェ”も開催予定。地域の人々や取引先との交流の場として、社員一人ひとりが関わりながら準備を進めています。



-地域とともに作る製粉会社へ

 丹羽さんが描く未来は、地域と一緒に作る製粉会社です。「メーカーの強みは“作ること”。だから地域の方の“作りたい”を実現できる会社でありたいんです」。自分たちが製粉した小麦粉が、パンやお菓子になり、人の口に届く。その「ありがとう」を直接聞けることが、社員のやりがいにもつながるといいます。今後は、工場見学、クッキング教室、食育イベントなど、体験型の取り組みも計画しているそうです。
 西尾製粉が長く続いてきた理由を、丹羽さんは「信頼」だと話します。「先代の時にお世話になったから、なかなか他に変えられない。そう言ってくださるお客様が本当に多いんです」。だからこそ、これからも大切にしたいのは人とのつながり。農家や取引先、地域の人たちとの関係を深めながら、“顔の見える製粉会社”として歩んでいきたいと考えています。




西尾製粉株式会社

西尾市桜町中新田31-2
TEL:0563-56-5181

https://www.nishio-seifun.co.jp/